書評

42.『雪のひとひら』 ポール・ギャリコ著 矢川澄子訳 新潮文庫 平成20年12月1日

2015年3月14日、身近な人から贈り物をいただきました。「読書ノート」です。このブログを開設したのは一昨年の初夏ですが、それよりもずった前にいただいていた「読書ノート」を発見し利用するようになったことで、本の紹介の原稿を整理するのに大変重...
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41.『共喰い』 田中慎弥著 集英社 2012年2月12日4刷

第146回芥川賞(平成23年度上半期)受賞作です。 数年前にある文章を書いたところ、それを読んで下さった女性から「いかにも男性が書いたものだ」との指摘を受けたことがあります。私は本を選ぶ際、特に作者の性別を考慮に入れることはありませんでした...
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40.『ほかならぬ人へ』 白石一文著 祥伝社 平成22年2月1日4刷

「何気ない日常を淡々と描いている」と評される作品はたくさんあります。ある人物の何気ない日常が作品として成り立つのなら、人の数だけ物語が存在することになり、それこそ数え切れないほどの物語が世にあふれることになります。もちろん、すべての人々の日...
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39.『私が語りはじめた彼は』 三浦しをん著 新潮社 2004年9月25日4刷

人は、自分と相手との関係性において、特定の枠を設けて自分の姿を見せる領域を制限するものです。 仕事を介して知り合った相手には、仕事上の関係性にふさわしい範囲に限定し、自分の姿を見せるものです。うっかりその枠を逸脱してしまうと、仕事上の関係性...
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38.『アンの青春』 モンゴメリ著 村岡花子訳 新潮文庫 平成20年9月30日4版

『赤毛のアン』については、この「本の紹介」のページで以前取り上げたことがあります。今回紹介する『アンの青春』は、『赤毛のアン』の続編です。私は1979年1月7日にフジテレビ系列で放送が開始されたアニメ『赤毛のアン』が大好きで、そこからこの物...
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37.『あられもない祈り』 島本理生著 河出書房新社 2010年6月6日3刷

私は一般化や類型化を好みません。特に芸術に関しては、個別性や特性を見出してこそ作品を楽しむことができると信じています。敢えて芸術に限定したのには訳があります。ある作品が、他の作品と異なる特性を有しているからこそ受け入れられる、評価されるとい...
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36.『乳と卵』 川上未映子著 文藝春秋 2008年2月25日第1刷

2007(平成19)年下半期、第138回芥川賞受賞作です。 皆さんは何を参考にして本の購入を決意するでしょうか。例えば、芥川賞や直木賞といった著名な文学賞の受賞作は必ず購入すると決めている方がいるかもしれません。また、雑誌に限らず新聞などで...
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35.『スプートニクの恋人』 村上春樹著 講談社 1999年4月25日第2刷

登場人物3人の行動を柱として描かれた物語です。すみれは大学の文芸科に籍を置く作家志望の女性です。彼女は17歳年上の既婚女性であるミュウと出会います。ミュウは自分の名前でコンサートを開くことができるようなピアニストになることを目指して邁進して...
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34.『国境の南、太陽の西』 村上春樹著 講談社 1992年10月26日第3刷

人生には選択する余地がないものがあります。例えば、親です。子どもは親を選んで生まれてくることができません。そこには運命としか言いようのない、必然なのか偶然なのかよく分からない力が働いて、結果だけがもたらされます。その他にも選択する余地がない...
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33.『ノルウェイの森』 村上春樹著 講談社 上・1988年12月24日第28刷、下・1988年8月24日第21刷

私はこれまで、意識的に村上春樹の作品を紹介することを避けてきました。その理由は、村上春樹の作品には他の作家よりも多くの熱狂的な支持者が存在するうえ、執筆活動を継続している作家でありながら、その作品に対する評論や研究書があまりに多く存在するか...